WHAT YOU CAN DO この記事を読んでできること

WordPressは公開して終わりではありません。PHPやプラグインの更新、制作会社の責任範囲、自分で管理する場合の負担、保守契約で確認したいことを中立的に解説します。

WordPressでホームページを制作したあと、数年ぶりに制作会社へ「PHPを更新してください」「プラグインの脆弱性は大丈夫でしょうか」と問い合わせる。そんな場面は珍しくありません。

ただ、サイトの制作と、公開後も安全に使い続けるための保守は、同じ仕事ではありません。 制作時の契約に継続的な保守が含まれていなければ、誰が更新情報を調べ、判断し、作業するのかが決まっていないこともあります。

本記事では、保守を勧めるために不安をあおるのではなく、自社で管理する場合と、外部に依頼する場合に必要なことを整理します。

1. WordPressサイトは、公開したあとも管理が必要

WordPressのホームページは、公開したら完成して終わり、というものではありません。WordPressの中身だけでなく、サイトを動かす環境や、万一に備える仕組みも管理する必要があります。

公開後に管理する対象は、主に次の7つです。サイトが動き続けるために必要なものを、3つに分けて整理しました。

WordPressの中身を管理する

  • WordPress本体ページやお知らせを管理する仕組み。安全性を保つための更新が必要です。
  • プラグインお問い合わせフォームなどの追加機能。更新しないと不具合や脆弱性が残る場合があります。
  • テーマデザインや表示を決める仕組み。更新時には表示崩れや機能への影響も確認します。

サイトを動かす環境を管理する

  • PHP(ピーエイチピー)WordPressをサーバー上で動かすための仕組み。古いバージョンはサポートが終了し、変更時には互換性の確認が必要です。
  • サーバー・データベースサイトを公開し、記事などのデータを保存する場所。契約や稼働状況、更新の必要性を確認します。

サイトを守るために管理する

  • ドメイン・SSL証明書サイトのURLと通信の安全性に関わるもの。契約期限や証明書の更新状況を確認します。
  • バックアップトラブル時にサイトを元に戻すための備え。保存されているだけでなく、復元できるかも大切です。

大切なのは、それぞれの管理状況と担当者が分かること。 7項目すべてを経営者やWeb担当者が自分で更新する必要はなく、サーバー会社・制作会社・保守担当者などに任せることもできます。チェックマークは管理が完了している印ではなく、公開後に確認しておきたい管理対象を示しています。

IPAも、サイトを構成するソフトウェアを把握し、脆弱性に応じてバージョンアップなどの対策を行うよう案内しています。詳しくはIPAの運用管理チェックポイントを参照してください。

新しい記事を投稿しなくても、サイトを動かす仕組みの管理は続きます。 では、例えば「PHPを更新してください」と連絡が来たとき、実際に何をする必要があるのでしょうか。

2. 今回のような「PHPを更新してください」は何が問題なのか

PHPはWordPress本体とは別の、サーバー側の実行環境です。WordPressやプラグインを更新していても、PHPが古いまま残っていることがあります。

ここで大事なのは、「PHPのバージョンを切り替える操作」と「WordPressサイトが問題なく動くことを確認する作業」は別だという点です。

例えば、レンタルサーバーの管理画面でPHPを切り替える操作は数分で終わることがあります。一方で、古いテーマやプラグインが新しいPHPに対応していなければ、画面が真っ白になったり、フォームが動かなくなったりする可能性があります。

作業には、少なくとも次の6つの工程があります。設定画面で切り替える前の準備と、切り替えた後の確認が重要です。

  1. 現状を調べる

    PHP・WordPress本体・プラグイン・テーマのバージョンを把握する。

  2. 互換性を調べる

    変更先のPHPで、テーマや主要なプラグインが動作するか確認する。

  3. 元に戻せる状態にする

    ファイルとデータベースをバックアップし、復元手順を確保する。

  4. 必要に応じて事前検証する

    テスト環境などで更新し、不具合が出る場合は原因を調べる。

  5. 本番更新と動作確認

    表示・お問い合わせフォーム・ログイン・主要な機能を確認する。

  6. 結果を記録する

    更新日・対応内容・問題の有無・復旧方法を残す。

WordPress公式も、PHPの変更前にバックアップと互換性確認を行うよう案内しています。WordPress.org日本語版の推奨動作環境では、現在はPHP 8.3以上を推奨しています。ただし、実際の更新先は、使っているWordPress・プラグイン・テーマとサーバー側の対応状況を確認して判断する必要があります。

また、レンタルサーバー会社がPHPの切り替え手段を提供していても、個別のWordPressサイトの互換性検証まで必ず行ってくれるわけではありません。契約しているサービスの対応範囲を確認しましょう。

3. 納品した制作会社は、いつまで責任を負う?

ここは、「納品したら制作会社には一切責任がない」とは言い切れません。反対に、「一度制作した会社は、その後の更新や不具合に無期限・無償で対応する義務がある」とも言えません。

分けて考えたいのは、不具合がいつ、何をきっかけに生じたかということです。

納品時点の問題

最初から契約内容に合わない不具合があった

制作契約の内容や法律に照らして、契約不適合責任などが問題になる場合があります。

公開後の環境変化

新たな脆弱性の発見・PHPのサポート終了

継続的な更新や調査を誰が行うかは、保守契約や合意内容によって変わります。納品だけで無償の対応義務が当然に続くわけではありません。

追加作業による問題

納品後の改修・保守作業で不具合が生じた

その作業を担当した人、契約内容、作業の適切さなどを個別に確認する必要があります。

日本の民法では、請負契約に関する契約不適合責任の規定があります。例えば、種類・品質の不適合については注文者が不適合を知ってから原則1年以内に通知するという規定があります(民法637条)。これは「納品から1年で全責任が必ず消える」という意味ではありません。契約条項、通知の時期、消滅時効、例外なども関わります。請負以外の契約類型や複合契約の場合もあります。詳細は民法および国民生活センターの解説を確認してください。

IPAも情報システム・モデル取引・契約書において、開発・保守運用の役割分担や契約条項を整理しています。

重要なのは、制作契約と保守契約の範囲を書面で確かめること。 この記事は一般的な情報提供であり、個々の契約の法的評価ではありません。判断が難しい場合は契約書をもとに法律の専門家へ相談してください。

4. 「何かあったら制作会社に聞ける」とは限らない

サイトを作ってもらった会社が、一番詳しい相談相手であることは確かです。しかし、継続的な相談受付や無償調査が、納品と同時に自動で付いてくるわけではありません。

例えば「プラグインを更新して大丈夫か」「PHPをどのバージョンにすべきか」は、単に質問に答えるだけではなく、使っているテーマやプラグイン、サーバー環境を調べないと判断できないことがあります。

制作会社側にも、時間と専門的な調査作業が必要です。納品後の問い合わせについては、契約で決まったサポート期間・回数の範囲内なのか、別途有償の調査になるのかを確認しましょう。

制作会社が変わっていたり、元の担当者がいなかったりすると、まず管理権限や仕様を調べる時間が必要になる場合もあります。質問に答えてくれることと、継続的に管理していることは異なります。

5. 自社で管理するなら、何ができればよい?

保守契約を結ばず、自社で管理することもできます。小規模でシンプルなサイトなら、担当者が基本的な知識を身につけ、定期的に確認する方法は現実的です。

ただし、何でも自力で直せる必要はなくても、不具合に気づき、原因を調べ、作業を止めるべき場面を判断し、必要な相談先を見つける能力は必要になります。

自社管理で必要なのは、主に次の6つの力と準備です。

  • 権限・契約を把握する

    WordPress管理者、サーバー、ドメイン、メール、SSLの契約者とログイン先が分かる。

  • 更新状況を調べる

    本体・プラグイン・テーマ・PHPのバージョンや更新通知を確認できる。

  • バックアップを管理する

    保存先・頻度・保持期間が分かり、復元方法を確認できる。

  • 更新後にテストする

    主要ページ、スマホ表示、フォーム、ログイン、必要に応じて決済を確認できる。

  • 情報を調べる

    WordPress公式情報、更新履歴、サーバーのお知らせ、IPAなどを確認できる。

  • トラブル時に判断する

    公開停止や復旧の要否、専門家へ相談すべき場面を見極める。

作業時間も忘れてはいけません。実際の更新操作より、事前確認、リスク判断、動作テスト、記録、復旧対応に時間がかかることがあります。「自社管理なら無料」ではなく、担当者の時間と対応可能な範囲で判断するのが現実的です。

6. 保守契約に入るメリットと、入っても解決しないこと

保守契約のメリットは、公開後の管理を誰が担当し、何かあったときにどう対応するかを決めておけることです。ただし、保守に入れば、あらゆる問題を無料で解決してもらえるわけではありません。

保守契約で得られること
更新状況を把握できるWordPressなどの更新情報や脆弱性を定期的に確認してもらえる。
通常の更新を任せられる契約範囲内の本体・プラグイン更新や動作確認を依頼できる。
復旧への備えができるバックアップの取得・保管や復旧手順を事前に決められる。
相談先が明確になる異常時の連絡先や受付方法、対応の流れを決められる。
管理状況が見えるようになる実施した更新や残るリスクについて報告を受けられる。
保守契約だけでは解決しないこと
脆弱性がゼロにはならない保守を依頼しても、攻撃や障害を完全に防げる保証はない。
大きな改修は別作業になり得る古いテーマの改修や大幅なPHP更新、サーバー移行などは別途費用がかかる場合がある。
完全・即時の復旧は保証されない保存状況や障害の内容によって、復旧できる範囲や時間は異なる。
いつでも無制限に対応とは限らない夜間・休日対応や緊急復旧、調査時間には条件があることが多い。
サイトの成果まで保証するものではない集客・問い合わせ増加やコンテンツ改善は、別の取り組みになる。

7. 自社管理・スポット依頼・保守契約の選び方

OPTION 01

自社で管理する

向いているケース

担当者にWebの基本知識があり、定期的な作業時間を確保できる。

注意すること

更新情報の収集、作業判断、バックアップ、復旧などは社内で担う。

OPTION 02

必要なときだけ依頼する

向いているケース

小規模なサイトで、継続監視の優先度が比較的低い。

注意すること

問題の発見が遅れたり、依頼先の調査開始まで時間がかかったりする。

OPTION 03

月額保守を依頼する

向いているケース

問い合わせ・採用・予約など、サイトの停止が事業に影響する。

注意すること

含まれる作業、追加料金、対応時間を具体的に確認する。

すべてのWordPressサイトに同じ保守プランが必要なわけではありません。 更新頻度が低い小さなサイトと、商品を販売し個人情報を扱うサイトとでは、リスクや必要な体制が違います。

一方、古いPHPやWordPressが長期間放置されたサイトでは、通常の月額保守に入る前に初期診断・改修・移行が必要になることもあります。現在の状態を確認せず、定額で何でも引き受けるサービスが適切とは限りません。

8. 保守を依頼するときのチェックリスト

保守を依頼する前に確認したい8つの項目です。分かっているものにチェックを入れると、このページ内で確認できた数が分かります。

MAINTENANCE CHECK SHEET

依頼前に確認したい8項目

0 / 8
保守契約前の確認事項

チェック結果はこの画面内のみで管理され、送信・保存されません。

制作会社への依頼を考える前に、まず自社でサーバー契約情報とWordPressの管理画面が分かる状態を作ることから始めてもよいでしょう。

9. AIや自動更新だけで保守を済ませられる?

WordPressには自動更新機能があります。更新通知やプラグインの更新など、一部の管理作業を自動化することも可能です。WordPress公式の説明でも、その仕組みや、事前のバックアップの必要性が案内されています。

AIを使えば、更新情報の収集、影響がありそうなプラグインの整理、変更履歴の要約、担当者への通知なども効率化できます。

ただし、AIによる「問題なさそう」という判断だけを根拠に本番サイトへ無条件で更新を適用するのは避けたいところです。特にPHPのメジャーアップデート、重要なプラグイン、カスタマイズされたテーマでは、バックアップ・テスト・人による承認と、問題発生時の戻し方が重要です。

自社管理でも外部委託でも、AIは判断を助ける道具であって、責任の所在そのものをなくす仕組みではありません。

まとめ:公開したサイトを「誰が管理するか」を決めよう

WordPressのサイト保守は、制作会社が無期限に無償で対応すべき仕事でも、必ず月額契約しなければならない仕事でもありません。

大切なのは、「公開後のソフトウェア更新と異常対応を、誰が、どの範囲で、どの頻度で行うか」を決めておくことです。

自社で調べて管理するか、困ったときに都度相談するか、継続的な保守契約を結ぶか。自社の担当者の知識、確保できる時間、サイトの重要度、費用を照らし合わせて選びましょう。

本記事は2026年10月26日時点の一般的な情報を基に作成しています。法令・WordPress・PHP・各サービスの仕様は変更されるため、個別の契約判断やアップデートを行う際は最新の情報を確認してください。

EDITED BY UMIBE

この記事は、Webサイトの企画・制作・運用を行う株式会社UMIBEが編集しています。

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